BARFOUT!

2011/06

BARFOUT! / 6月号「纏う。太田莉菜」

category: magazine - Brown’s Books - BARFOUT!


BARFOUT! / 6月号「纏う。太田莉菜」

Photography : 宮原夢画(Muga Miyahara Fotografia)
Styling : 小林新(高橋事務所)
Hair : JUNYA(高橋事務所)
Makeup : 遠藤真稀子(高橋事務所)

Text & Art Direction : 鈴木利幸(united lounge tokyo)
Graphic Design : 三森由美(united lounge tokyo)

 

文 鈴木利幸

纏う。

脱ぎ捨てることを覚悟した女性が
新しい命という永遠に脱ぐことのないものを
纏った。

太田莉菜は、子供を育てている今でも、ときに少女にも見える。
そのあやうさが、彼女の魅力なんだろう。

13歳で、モデルとしてデビューした少女は
10代の6年間で、様々な雑誌やコマーシャルをにぎわせた。
クリエーターの創造性を刺激する個性だった。
日本人の父と、ロシア人の母の間に生を受けた太田莉菜は
その見た目から、クールな表情や動きを求められることが多かったという。

実際に会うとよく笑う。よく話す。
雑誌やコマーシャルで見る印象とはずいぶんと違う。
はじめまして、で話しだすふたりの間を
気遣ってか、いろんなことを話してくれた。
妙にコンセプチャルな話をする。
普通に大学にも通っているから、すごく女の子な話もする。
無意識に、相手によって、いろんな世界を横断している

19歳のときに、仕事で行き詰まったと
教えてくれた。もうモデルを辞めたいくらいに。
同じタイミングで妊娠がわかったという。
なんの躊躇もなしに、彼女はそれを受け入れたそうだ。

だから、太田莉菜は20歳で、子供を授かった。

結婚をする。子供を授かる。
そのタイミングは、人によって様々だ。
彼女は、きっと直感型の人間なんだろうな。
生きてゆくことにおいて、大きなことも小さなことも
さらっと受け入れる。彼女の中では大きな決断でもなんでもない。
「私は、そういう人生なんだ」とすぐ思えたんだろう。

そして、クールと呼ばれ時代に愛されたモデルは、
もの言わないモデルという職業よりも
呼吸し、身体で演じる女優という職業の道を進もうとしている。

話しているときの太田莉菜は、決して目をそらさない。
合っているその視線をそらす勇気が、そのとき僕にはなかった。
太田莉菜には、なんだか、妙な色気がある。
目?しぐさ?
なんだろう。彼女は自分の吐き出す言葉に責任を持つように
噛み砕き、考え、懸命に話す。その姿、なのだろうか。

駆け足で毎日を生きているよね?
「そうですか?同じですよ、同世代の子と」
彼女の中では、友達たちと同じ歩測で生きている。

いま23歳。まだ23歳。同世代の女性は就職活動をしている。
太田莉菜も同様に、女優という名の仕事を選んだ。
でも、その仕事は、手取り足取り誰も教えてくれない。
ある意味、自分自身への解答を探し続ける。