BARFOUT!

2011/06

BARFOUT! / 5月号「纏う。市川実和子」

category: magazine - Brown’s Books - BARFOUT!


BARFOUT! / 5月号「纏う。市川実和子」

Photography : 宮原夢画(Muga Miyahara Fotografia)
Styling : 小林新(高橋事務所)
Hair : JUNYA(高橋事務所)
Makeup : 遠藤真稀子(高橋事務所)

Text & Art Direction : 鈴木利幸(united lounge tokyo)
Graphic Design : 三森由美(united lounge tokyo)

 

文 鈴木利幸

纏う。

自分を自分以上に見せない。自分以下にも見せない。
他人に、求めない。依存しない。
彼女は、一番自分が動きやすいものしか纏っていない。

バブル後に現れた、まったく新しいモデルという名のアイコン。
なんとなく、市川実和子という女性はそういう認識だった。
不思議な存在感を放つ個性派モデルとして、
10代の彼女は時代を体現していた。
バブル後の、混沌としたサブ・カルチャー神話のミューズとして。

キレイなひと。会ってみるときっとそう感じる人が多いと思う。
身長は170cm。モデルとしては大きな方ではない。
では、かつてその顔立ちや佇まいから個性的と評されていた彼女は
なんだったのだろうと思うほど、印象が違っていた。

東京の公務員の家庭で育った。転勤も多かったという。
自分を持つ、自分を防御する。
そういう術を無意識に身につけていたんだろうな。そう思った。
たしかに彼女には壁がある。でも嫌な壁ではない。
話しているとき、それに気づいたのか。彼女が言った。
「話しにくいですか?」

どのくらいの撮影をこなし、どのくらいの雑誌の表紙を飾ったのか。
でも、自分が出ている過去の雑誌は持っていないという。
興味がないんだ、と。じゃあ、これから先は?
「わからない。行き当たりばったりだから」
彼女は、毎日を上書きしている。きっと過去には戻らない。

途中、「世の中の自分の見え方や、これからについて
考えたこともあるんです」と聞いた。
「でも、苦しくなるから、いつもすぐやめるんです」と。
自分で自分のこれからを縛っている感覚になるのだろうか。
いつも自由でいたいのだろう。大丈夫。自由に見えているから。
そして、自由であることが市川実和子をつくっている。

「結婚願望もないんですよね。なぜかはわからないんだけど」
でも、もし人生の中でそういうタイミングがくれば、
すぐに色んなことを決断していく人なんだ、と思う。
でも、それは市川実和子が決めていくわけでない。

稀に、まわりが色んなことを決めてくれる。
そういう流れを作り出すひとがいる。

だから、市川実和子は
愛してる、って言わない。